お見合い相手はエリート同期
「行くなよ。ここにいろよ。
なんもすることなくて悪いけど。」
少し拗ねたような声に胸をわしづかみされたような気分になって「……うん」と小さく答えた。
「寝てていいから。」
テーブルの隅にあったクッションを後ろ手で渡されて微笑む。
澤口には似合わないクマの顔の形をした可愛いクッション。
からかおうと見た先の澤口は既に仕事モードの真剣な表情でノートパソコンを見つめていた。
こんな人がこんな可愛いクッションを持っていて、しかもあんな……「帰らないで」って言わせる為だからって……。
澤口の違った一面を見られて、意外にも不器用な人なのかもしれないと微笑ましい気持ちになった。