お見合い相手はエリート同期

 いつもより入念にメイクを施し、あの時に着た、いつもより華やかな服を選ぶ。

 靴もいつもは履かない7センチのヒールのもの。

 何が待ち受けているのか分からない緊張感を持ってホテルへと向かった。
 
 あの時と変わらない華やかな高級ホテルのフロントラウンジ。
 あの時よりも私を置き去りにして別世界に1人取り残されたような気分になる。

 約束の時間になっても現れない澤口は、もしかしたら私へ恥をかかせたかっただけなのかもしれない。

 もう少し。
 もう少し待って来なかったら、もう帰ろう。

 澤口とのことは忘れたらいい。
 別世界の人だと思っていた人と僅かな時間だったけど時間を共にして。

 楽しかった。それだけは本当の気持ち。

 だから、もう……。


 外の景色を眺めて、雑踏の中にいる人を見つけてしまう自分に嫌気がさす。
 跳ねるように立ち上がると出口へ行きかけて逆の方へ足を向けた。

 澤口がいた。
 逃げ出したい気持ちなのに、ここから出口へ行ってしまっては鉢合わせしてしまう。

 澤口の隣には女性がいた。
 背の低い可愛いらしい女の子。

 わざわざ見せつける為にここへ呼び出したの?
 悪趣味にも程がある。


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