お見合い相手はエリート同期
不意に手が引かれて、転びそうになる体を支えられた。
「その化粧。嫌いだって言ったけど?」
当たり前のように腰を抱かれて拒絶したいのに、手が震えて思うように動いてくれない。
澤口もあの日と同じ光沢のあるスーツを着て、何を考えているのか分からない表情で私を抱き上げた。
「ひゃっ。ちょっと!」
「舌を噛むから黙ってろ。」
軽々と抱き上げて連れて行く澤口の腕の中で暴れてみても無駄なあがきに過ぎなくて、エレベーターへ押し込まれてしまった。
さっきの女の子はなんなの?
どうしてこんなこと……。
戸惑う心は不平を口からこぼれさせた。
「私には目移りするなって言ったくせに。」
「だから何?」
平然と答える澤口にわなわなと手が震える。
やっぱり私が出会う男はクズ男ばかりなの?
見合いをしたところでその呪縛からは逃れられないの?
エレベーターが止まると有無を言わさず手を引かれ部屋の中で離された。