お見合い相手はエリート同期
自分の身に何が待ち受けているのか想像したくないのに脚が竦みそうになって澤口を睨みつける。
「どう思ったか今の気持ちを言ってみろよ。」
「はい?」
「俺が他の女と歩いてるのを見て嬉しかったのか、聞いている。
あいつとは残念ながら何もないよ。」
「……私への仕返しでやったってこと?」
やっぱり、わざと見せつけるように?
そんな人だったなんて……。
ううん。違う……。
澤口にそんなことさせたのは自分だ。
澤口は私に余計な心配をさせないように休日出勤にさえも誘ってくれるような人だ。
私がフラフラするような態度をとったせい……。
「朱音に朱音自身の気持ちをハッキリさせる為にだ。」
「私の気持ちって……。」
澤口は私を真っ直ぐに見つめ返した。
その瞳から目が離せない。
「俺のこと見合い相手としてただ気に入っていただけの気持ちか、よく考えるんだな。」
「見合い相手として……。」
違う。
本当はずっと分かってた。
ただその気持ちを見ないようにしていただけで………。
「澤口のこと、好き……。」
だから不安で、だからその気持ちから逃げようとして筒井さんの言葉に揺れた。