お見合い相手はエリート同期
後退る私へ歩み寄ってキスをしようと顔を近づける。
「やめてよ。」
嫌いなんでしょ?
割り切った関係でいられたのに。
気付かせたりしなければ……。
拒んでいるのに無理矢理、唇を重ねられてキスをされる。
優しいキスは余計に虚しさを募らせるだけだった。
「嫌だったら!」
抱き寄せようとする腕を振り払って逃げようとする体を後ろから捕らえられた。
うなじにキスを落とされて吐息が漏れる。
「……待って。ここ会社。」
「フッ。真面目かって。」
身動いでみても澤口はやめるどころか甘く唇を這わせる。
「待ってよ。……お願い。」
優しくガラス細工を扱うように触れる澤口に切ない声が漏れる。
「待っ、て。」
甘く濡れていく吐息混じりの声。
すると急に止められた。
「澤口?」
体を離した澤口が私の腕をつかんで体を起こすのを手伝って会議室の出口へと向かった。
「医務室行こう。」
至って普通に言われ、こっちは動揺を隠せずにいた。
「待ってよ。」
体の奥が疼いて澤口の服の端をつかむ。
やめてとは言ったけど。
うつむいていく顔に澤口が近づいて耳にフッと息を吹きかけた。
ただそれだけのことに体は反応して、その場へへたり込むと、その体に押されてガタガタガタと机と椅子が大きな音を立てた。
目を細めて微笑む澤口が悪魔に思えて仕方がない。