お見合い相手はエリート同期

 俺は高橋がそんな奴じゃないことを知っていた。
 噂を聞いた頃から興味本位で高橋を観察するようになったからだ。

 当初はどうせ見掛け倒しの女だからだと踏んで鼻先で笑うつもりだった。

「高橋さん。この仕事……。」

「高橋さん。」「高橋さん。」

 見掛ける度に仕事を真剣にしている高橋を目の当たりにする。
 周りに頼られ1年目にして仕事をこなす高橋の姿。

 いつの間にか高橋の癖まで把握するほどに高橋のことを知る。

 疲れると髪をまとめていたヘアクリップを取って頭を左右に振ることも、割と口が悪くて嫌なことがあると舌打ちすることも。

 疲れてくると無理に笑って顔が引きつることも。
 自分の心配よりも人の心配することも。

 ただ相変わらず男の趣味は最悪でその時もバンドマンを夢見て働かない絵に描いたようなクズ男と付き合っていた。
 しかもその男を献身的に支えてるらしく。

 馬鹿馬鹿しい。
 プライベートの時間まで高橋の観察をすることはない。

 それから海外へ行って夢中で仕事をした。
 高橋のことも忘れていた。

 日本へ帰って再び名前を聞くまでは。

< 132 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop