お見合い相手はエリート同期
22.守らせて

「澤口と何かあったの?
 だからやめておきなって言ったのに。
 この後、良ければ相談に乗ろうか。」

 人もまばらになってきた時間帯に岡本課長から声をかけられた。
 ぼんやりしていた私へ声をかけてきて、目ざといというか、なんというか……。

 私は何か言い返してやろうと口を開きかけて言葉を失った。
 どうしてこういうタイミングで……。

 図ったように澤口が現れて一瞬で心奪われる自分が情けなくなってしまう。

 澤口は岡本課長へ意見した。

「岡本課長。
 今って朱音の上司でもなんでもないですよね?
 同じ仕事をしているわけでもない。」

「だから、なんだ。」

 澤口の真っ直ぐ淀みのない声。
 低音で色気まで含んでいて。

 岡本課長を非難しているのに、その声を聞いて胸が甘く疼いてしまう。

「2人で会う必要あります?
 奥様、いらっしゃいますよね?」

「澤口みたいに女をはべらかしているような奴に言われたくないね。」

 やっぱりはべらかしているの?
 今は何を信じていいのか分からなくて不用意な言葉に簡単に心が揺れる。

 揺れる必要ないのに……そう嘲笑して頭を振る。
 私は澤口から身を引いたんだから。
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