お見合い相手はエリート同期

「登山を始めたりスポーツジムに通い始めたのも。
 海外赴任の希望を出したのも。
 俺の為なんだろ?」

 え………。

 顔を上げるとみんなが私を見ていて、それは、澤口が私を見ているせいだった。

 遠く離れた澤口が私を真っ直ぐに見つめている。

「どうして知ってるの?って顔だな。
 お前のこと、なんでも知ってるって言っただろ。」

 だって………そんな……。

 私はただ、忘れられなくて。
 無駄なことしてるって分かってるのに、いつか澤口にもう一度、好きって言いたくて……。

 でもそれさえももう叶わないんだって……。

「好きだよ。朱音。
 俺と結婚してください。」

 真っ直ぐに見つめて言われ、頭を深く下げた澤口に「わぁー!!!」と周りが大騒ぎして、私は滲んで見えなくなる視界の中で頷くだけで精一杯だった。

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