お見合い相手はエリート同期

「人から……奪う趣味ないって岡本課長や筒井さんにも……。」

「………ッ。俺が先に手をつけてたろ。
 それに………。」

「それに?」

「今回は、、。
 まぁ結果オーライでいいだろ?」

 嫌いだって言われて強烈に心に澤口が刻まれた。
 それが捕らわれる為の甘い甘い罠だったなんて誰が気付けるというの?

「捻くれてる。」

「お褒めいただき光栄です。」

「褒めてない!」

「ハハッ。」

 軽い笑いを吐いた澤口が急に声を落として真剣なトーンで話した。

「うん。冗談抜きで悪かったよ。
 俺自身も気付いたのはずっと後だったから。
 でも、うん。ごめん。
 再会して目の前で嫌いって言った時の朱音の顔を見て、何やってんだかって自己嫌悪した。」

「澤口………。」

「嫌いって言った後だったし。
 本当の気持ちを伝えたくても言ったところで信じてもらえないだろうと思って。」

 その理由はさっき聞いた通りだろう。

「だからって……。」

 ずっとずっとつらかった。

 何をされても「嫌いなんでしょ?」って言葉の呪縛に囚われて。

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