お見合い相手はエリート同期
『苛立ったからって髪を振り乱すなよ。』
「な………。」
思わず辺りを見渡した。
いるわけ、ない……か。
澤口のことだ。
すぐ近くで観察しながらメールを送るなんて悪趣味なことくらいやり兼ねない。
それも失笑を交えながら。
最初のメールの『舌打ちせずに』も、今回の『髪を振り乱すなよ』もまるで私のことよく知っているみたいな………。
不可解に思いながらもメールにある最後の一文へのみ返事を返した。
『7時に上がれそうか?』
『7時なら。』
間を空けずに澤口からメールが届いた。
『俺も7時に上がる。
遅れるかもしれないから現地集合で。』
メールにはお店と地図が添付されていて、地図を開かなくとも名前を見ただけでどこか分かる自分が口惜しかった。