お見合い相手はエリート同期
26.もう1つの罠
可愛らしいバスタブにはお湯が張られている。
1人にさせられて冷静になった方が滅茶苦茶恥ずかしいのに。
体の隅々まで念入りに洗って、そんな自分にまた赤面して、湯あたりしそうになるまで湯船に浸かった。
羞恥心を抱えて出ると、顔も見られずに「先にお風呂ありがとね。出たよ」と声を掛けると「俺も行ってくる」と澤口もバスルームの方へ歩いていく。
振り返った澤口が「逃げるのはナシだからな」と釘を刺した。
逃げ出したい。
シャワーを終えるのを待つ……。
どんな羞恥プレイ………。
耐えられなくて大人げなくまた寝たふりを決め込んだ。
少しして出て来た澤口はあの時と同じように私とは反対側からベッドへ入った。
あの時と違うのはホッとしつつも、寂しい気持ちの方が上回ること。
「懐かしいな。あの時もそうだった。」
澤口がポツリとつぶやいて笑う。
「あの時、手を出さなかった俺を褒めてやりたいわ。」
距離を詰めた澤口が私を抱き起こして壁へもたれさせて座らせた。
寝たふりなんて今の私達に意味ないってことくらい分かってるのに、どうにも恥ずかしくて顔を俯かせる。
「順番にキスからさせて。」
そう囁くように告げる澤口が優しく唇を触れ合わせた。
「好きだ。朱音。」
胸の奥がキュンと鳴いて澤口を服をつかむ。