お見合い相手はエリート同期

「その時は何のことかって思ってたけど…。
 ほら、あの休日出勤をした日。
 胸騒ぎがして、職場に顔を出すっていって帰ってこない朱音の様子を見に行った。」

 だからあの時、私のところへ……。

「多分、俺、あの人には敵わない気がする。
 自分は振られたってわざわざ言いに来て、敵に塩を送るような真似……。」

 澤口の胸に抱かれ、澤口の表情は見えない。

「朱音はその人のところへ行くんだと思ってた。
 それならそれでいいかって。
 そのままだったかもしれない。」

 澤口らしくない弱気な発言にギュッと服をつかむ。

「罠は仕掛けたつもりだったけど。」

「罠?『嫌い』ってやつ?」

 私の方へ向いた澤口は悪い顔をして口の端に笑みを浮かべた。

「お前の体に俺を忘れられなくなるおまじない?」

「それって………。」

 耳にフッと息を吹きかけられて「…ッ!」と体を縮こませた。

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