お見合い相手はエリート同期
それなのに今年の私は澤口に導かれて同じように街路樹の方へ歩いていく。
立ち止まった澤口は私を抱き寄せて改めて言った。
「キス、しよっか。」
私は腕の中で小さく頷いた。
頷きを確認した澤口はそっと頬に触れ、その手が優しく頬を撫でて顎を持ち上げた。
目と目が合えば周りのことなんて何も考えられなくなってしまって、そっと目を閉じた。
雪が舞うほどの寒さの中。
触れた唇はお互いに冷たくなっていて、触れた感覚は無いに等しかった。
一度離した唇は再び触れて次第に熱を帯びていく。
崩れ落ちてしまいそうな体を澤口の服をつかんで必死にしがみつくようにしていると、添えているだけだった澤口の腕が私の背中に手を回して自分の方へ引き寄せた。
「マズイな……離せない。」
唇の隙間から漏らした声が物語るように重ねた唇は離されるどころか甘い吐息混じりの呼吸をさせて艶かしさを増していく。
乱れた呼吸をさせておでこを重ね合わせた澤口が「名残惜しいけど行こうか」と甘く囁いた。