お見合い相手はエリート同期
予約してくれてあったディナーの場所は隠れ家的なお店だった。
狭いのも恋人向けなのか、横並びで座る個室の席はベンチシートタイプで肩は触れ合って座るしかない狭さ。
「店選び失敗した?」
さっきの流れのまま甘い雰囲気を平気で向ける澤口は「失敗した?」なんて口だけで絶対に計算づくだ。
指を絡ませて、すぐ近くにある唇はスナック感覚でキスをしてくる。
「ちょ、っと。お店ではどうなの?」
「箍っていう箍が絶賛外れ中。」
腰にまで手を回した澤口の手をつねった。
「遊び慣れてる澤口にとってはどうってことないんでしょうけど。」
私の文句にピクリと反応した澤口の纏う空気が一変したのが分かった。
「へぇ。俺、そういう目で見られてたんだ。」
耳を甘噛みされて声が漏れる。
「ちょ……ねぇ。澤口。」
「俺、遊んでるからこれくらい普通だろ?」
他人事のように言う澤口は完全に怒っているみたいだった。