お見合い相手はエリート同期

 服の隙間から素肌に滑らせた手が逃げようと身動ぐ私を直接捕まえる。

「前菜です。」

 店員さんが料理を持ってきてもお構いなしに私への濃厚なキスをやめない。

「澤…ねぇ、やめて。」

 甘く慈しみ合うような夜の時とは違う。
 私の気持ちとは関係なくぶつけられる欲情に体がカタカタと震えた。

「………ごめん。」

 体を離した澤口は狭い個室で私から最大限に距離を取って離れて座った。
 かろうじて出来た2人の距離に切なくなる。

 震える体でその距離を埋めるように澤口へ抱きついた。

「私こそごめん。素直になれなくて。
 言っていいことと悪いことの区別もつかなくて。」

「………あぁ。」

 澤口はこちらを見ないまま。
 私は気持ちを吐露した。

「私と違って澤口はモテるし……。」

「どちら様でしたっけ?
 人の目の前で何人もの奴に誘われてたのは。」

「それは……。」

 私が知らないだけじゃない?
 という言葉は飲み込んだ。
 けれど、それを見透かされているみたいだ。

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