お見合い相手はエリート同期
「寮ってことは会社から歩いて行ける距離の……。」
「あぁ。そう。あそこ。
ボロいのなんのって。」
「そう…ってそうじゃなくて。
じゃ澤口はわざわざタクシーに乗らなくても帰れたってことじゃない。」
会社帰りに同じタクシーに乗って送ってくれた。あの時。
私を送ってそのまま会社方面へ帰ったわけで……。
「あぁ。まぁそうだけど。」
もしかして、だからどこに住んでるか聞いた時に言葉を濁したの?
気を遣わせない為に……。
「もう!馬鹿!
分かりづらいにも程があるよ。」
「なんだよ。」
「こっちの話!」
「馬鹿って言われてこっちもあっちもあるかよ。」
ぷにっと頬をつままれて「痛いってば!」と怒る。
「前から思ってたけど。
お前の頬、スゲー癒し系。」
「褒めてない。それ。」
「褒めてる。褒めてる。」
頬を撫でて至福の顔をされると複雑な気持ちになる。
「で?住む?ここに。」
「え?」
「なんだよ。そういう流れだろ?」
澤口と話が噛み合わなくなることが多々あるのは、私のせい?
それとも、やっぱり澤口に振り回されてるよね?私。
「だって住むって……。あれ?」
私はもっとも重大なことに気付いて固まった。