お見合い相手はエリート同期
「いらっしゃい。待ってたわ。」
「初めまして。高橋朱音です。」
「もう。そんなにかしこまって。
可愛いんだから。
さぁさぁ。玄関先じゃ寒いから上がって?」
優しそうな澤口のお母さんに安堵しつつ、澤口の後に続いて上がらせてもらう。
客間に通されて緊張して待っていると澤口によく似たダンディなお父さんが現れた。
「初めまして。高橋朱音です。」
「ほう。君が朱音さん……。」
つぶやくように言われて緊張して次の言葉を待っていると「可愛らしい娘さんだ」とホクホクした顔で言われて胸を撫で下ろした。
「で?恭一のどこに惚れた。」
どこに………。
無理難題を押し付けられた気持ちになって隣の澤口へ助けを求めようと視線を泳がせても素知らぬ顔を決め込んでいる。
何か困れば助け船出すって言ったくせに!
絶対に面白い質問だと思って助ける気もないんだ。
澤口が悪戯好きだったことを身に染みて思い出してみても窮地を脱し得ない。
あぁ。こんな時に澤口ってここにいる人みんな澤口じゃない。って思い出したりする。
「恭一……さんは、普段は涼しい顔をしてるのに、ここぞという時は優しいところでしょうか。」
「ほう。朱音さんは……。」
「そのくらいにしておいてよ。
朱音、初めて家に来て緊張してるから。」
やっと助け船を出してくれた澤口に安堵して肩の力が抜けた。