お見合い相手はエリート同期
「………同居させたくなるわ。」
「え?」
驚いて顔を上げると澤口は意地悪な顔を向けて軽いキスを落とした。
「………ッ。もう!」
怒っても澤口はどこ吹く風なのは相変わらず。
「実家にいればずっと『恭一』だろ?」
「それは、そう、かもしれないけど。」
だってやっぱり澤口は澤口で。
名前で呼ぶのは恥ずかしい。
けれど呼ぶと嬉しそうな顔をしてくれるから私は敢えてたまに呼ぶことにしてるのかもしれない。
「……恭一?」
「ん?」
「ずっと、一緒にいようね。」
「あぁ。」
極上の微笑みを向けた澤口が思い立ったように手を引いて歩き出した。
「指輪、見に行こう。」
ご両親への挨拶が済んでからにしたいと言った私の意見を尊重して待ってくれていた。
「今日?」
「あぁ。すぐにでも。
朱音は心配だからな。」
澤口みたいな人に愛されていたら目移りする暇なんてないのに。
私は小さく訴えた。
「今日は指輪より澤口の側にいたい。」
歩むスピードを緩めた澤口が「そう…だな」と呟いた。
「あんまり可愛いこと言うと離してやれないから覚悟しとけよ。」
耳元で囁かれて顔を赤くする。
「フッ」と笑われて優しい顔を向ける澤口と目があった。
私は幸せを噛み締めるように握る手に少しだけ力を込めた。