お見合い相手はエリート同期
「どうしたの?」
「あぁ。こっちに帰ってきて連日パソコンに向かわされるとね。
眼疲労が著しくて。
で?コースは頼んであるから食前酒を選んで。」
そう言われれば開かれてから一向にめくられないページは食前酒のページを開いている。
コース……ですか。
この前の見合いの続きをしようっていうの?
上等じゃない。
そっちがその気なら「ご趣味は?」って聞いてやるわよ。
ワインなんて分からなくて困っていると「お勧めにしておこう」とスマートに促されて事なきを得た。
慣れた所作で一通り頼んでくれた澤口に見惚れないって言ったら嘘になる。
けど……ないものは、ないったらない。
注文を終えたのを見計らって私は小さく告げた。
「彼に温かいおしぼりをお願い出来ますか?
目が疲れているみたいなので、温められるものが欲しいのですが。」
嫌な顔、一つせずに「かしこまりました」と頭を下げて去っていく。
やっぱり高級店は違うなぁ。
顔におしぼりってオヤジかよって思ったとしても微塵もそんなの感じさせない。