お見合い相手はエリート同期

「朱音ちゃん!!
 ………と、そちらは?」

 朱音を見つけて嬉しそうに手を振った健太郎が俺を視界に入れた途端に表情を固くさせた。

 怪訝そうな顔を向けられてあからさまに敵意剥き出しにされると笑えてしまう。
 健太郎は可愛い系のいかにも弟を装っている男だった。

「久しぶりだね。
 健太郎も大きくなったね。」

「そうでしょ?
 俺、今年から社会人……って俺のことはどうでもよくて。」

 確か、2つ下と聞いていたから学部卒ってところか。

 朱音は俺の方へ手のひらを向けて俺を紹介した。
 婚約者と紹介するのが未だ慣れない様子で照れるのが愛おしくて自分で敢えて名乗らないようにしている。

「こちらが、、その、、婚約者の澤口恭一さん。
 同じ会社でアバンスの同期なの。」

 健太郎は俺のことを認めるわけもなくて俺への冷ややかな眼差しを和らげない。

「で、こちらが村井健太郎。
 ご近所さんで、小学校まで本当に弟だと思ってたのよ。」

「へぇ。本当に可愛らしい子だ。」

 朱音は俺の気持ちを知る由もなくて思い出話に花を咲かせた。

 近所の怖かった犬が死んで可愛い洋犬に代替わりしているだとか、角の駄菓子屋さんは文房具屋になって繁盛してるだとか。

 午前中に会った友達よりも実際の姉弟の会話を聞いているような古くからの幼馴染みらしい会話。

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