お見合い相手はエリート同期
ただ、当の本人はあの馬鹿にしたような視線を………。
「フッ。高橋は変わってないな。」
「え……。」
おしぼりで顔なんて拭かない。
オヤジくせぇ。
ってくらいの罵りあっても驚かない。
それが、変わってないって………。
見ていたみたいなメールの小さな指摘。
前からずっと私のことを知っているみたいな「変わってないな」って……。
「変わってないも何も、私のこと何も知らないでしょう?」
「いや。俺、朱音のことなら何でも知ってるけど?」
「………ッ。」
顔が赤くなりそうでグッと唇を噛む。
痛みを感じて少しだけ冷静を取り戻すと押さえきれない質問をこぼした。
「澤口は……。」
私のこと好きだったの?
この言葉は声に変わることはなかった。
私の声をかき消すように告げられる、悪夢にまで見た一言。
「俺、朱音のこと嫌いだから。」
何よ。それ。
意味わかんないよ。
嫌いなら放っておいてよ。
わなわなと震える指先をギュッと握り締めて「それなら名前で、呼んだりしないで」とかろうじて声に出した。
「フッ。」
何なの?何なの?
やっぱり馬鹿にしたいだけ?
またしても一瞬だけでも澤口は私のこと……って思って心ときめかせた自分が馬鹿みたい。
この人は私のことを蔑みたいだけ。
分かっていたことじゃないの。