お見合い相手はエリート同期
「Anti pasti.
前菜でございます。
秋刀魚のマリネ、サラダ仕立てです。
季節の野菜でカボチャも入っております。」
今度はおしぼりを持ってきてくれた人が料理も運んできてくれた。
これは一時休戦かな。
美味しい料理には敵わないもの。
目の前にいけ好かない奴が座っているのはこの際、置いておいて。
美味しそうな食事を堪能することにした。
澤口も見合いの件については特に何も言わない。
ただ私が「秋刀魚おいしい」「お肉やわらかい」「料理に合わせてワインまで変えてくれるなんて贅沢……」って少し浮かれ気味に話す言葉達に「あぁ」「うん」「まぁね」と気の無い感じながらも返事を返すだけだった。
食後のコーヒーをいただいて、夢見心地なディナーは終わりを迎えそうだ。
終わりの合図みたいに澤口が核心を突く言葉を口にした。
「朱音は見合いに何を求めてるんだ。」
先ほどから解せない『朱音』との呼び方に辟易する。
「何を……というより、どうして名前呼び?」
「見合いだから。」
全くもって納得できない説明だけどこれ以上聞くのも面倒で、放置することにした。
澤口も話を先へと促した。
「で?」
「で?って。
……そういう澤口はどうなのよ。」