お見合い相手はエリート同期
そう見合いなのよ。
私は背すじを伸ばして微笑みを浮かべた。
「本日はお時間をいただき誠にありがとうございます。
わたくし、高橋朱音と申します。」
目を見開いて呆気にとられている澤口に言葉を重ねた。
「恭一さん、ご趣味は?」
極上の笑みを浮かべて真っ直ぐに澤口へ視線を向ける。
視界の中の澤口の表情が変わってクククッと抑えきれないような笑みをこぼした。
「見合いらしくしたいのなら、伏せ目がちに言わないとダメだろ。」
どうせ三歩下がってついていくようなタイプじゃないわよ。
まだクククッと笑っている澤口にため息混じりに伝えた。
「ほら。私達が見合いだなんておかしくて笑っちゃうでしょ?
この話は無かったってことで。」
立ち上がろうとした私の手は長く伸ばされた澤口の手に取られた。
大きな手が私の手を握る。
「何よ。」
「俺は見合い相手として不満はない。
普通の見合いより知った顔の方が、初めましての奴より最初の段階を省いていける。」
手を握られたまま。
真っ直ぐに力強い眼差しを向けられて、思わず目を逸らした。