お見合い相手はエリート同期
6.癒しの人

「あの、支払い……。」

「いいって。
 結婚すればどうせ同じ財布だ。」

 澤口の口からまさかそんなセリフが出ると思わなかった。

 解消した時にまとめて精算ってならないわよね?
 訝る視線を送っても澤口には伝わらない。

 澤口が隣を歩くことに違和感を覚えつつ駅まで歩く。

 仕事用の低いパンプスだと尚のこと澤口の背の高さを感じた。

 目線は澤口の肩くらいになる。
 男性を見下げてしまうことはあっても、隣を歩いてこの身長差はなかなか体感したことがない。

 190近くあるのかもね。
 そんなことを思いながら見上げるとバッチリ目があって、白々しく目を逸らす。
 白々しくなろうともこの距離で見つめ合っていたくない。

「家どこ?送る。」

「え?」

 思わず心の声が漏れるといつもの澤口らしい皮肉った言い方をされた。

「何?この後、何か期待してた?」

「………ッ。」

 期待なんてするわけない。
 私は断りに来たんだから。

 けれど強く断れない私側にも色々と理由があって……。
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