お見合い相手はエリート同期
「職場から呼び出しだ。
帰国したばかりなのに人使い荒い。」
ため息を吐く澤口とは裏腹に安堵する思いだった。
部長の顔を立てる為だとしても、この人と同じテーブルに居たくない。
「レストランの予約は断っておく。」
軽く食事をしながら見合い相手の人となりを……と思っていたけれど、そんなもの必要なかった。
澤口と「ご趣味は……」なんて会話が出来るとは到底思えない。
この見合いはこれで流れた。
勉強になったじゃない。
次に頼む時は社外の人で、そして私とは関わりのない真っさらな人をお願いしよう。
「高橋は断ったりするなよ?」
「はい?」
まだ帰っていなかったのかと怪訝な視線を向けて何を断るのか、言葉の真意を探る。
「美人の高橋先輩が………。」
心にもないセリフが吐かれて、思ってもないくせにと睨みつける。
「実は男に困って見合いしてましたって噂立てられたくなかったら。」
こいつ……。
「そんなの澤口だって同じだよね?」
フッとまた息を吐いて彼は去って行った。
『断るな』は、流れ的に『この見合いを』ってこと?
どうして?なんで?
そこまでして私を蔑みたいわけ?
澤口の言動に理解出来ずにしばらくその場から動けなかった。