お見合い相手はエリート同期
「ハハッ。
高橋さんはそうは思っていないみたいだよ?」
岡本課長の指摘にも澤口は動じることはなかった。
「分かっていないのなら分からせますよ。
朱音は誰のモノかって。」
「朱音……ね。」
岡本課長は私達へ見たことのないような冷たい視線を向けて休憩室を出て行った。
岡本課長が出て行ってしばらくすると腕は離された。
それはそれでどんな顔をすればいいのか分からない。
「飯はまだ?」
「え、えぇ。」
「仕事、今日はもういいだろ?
行こう。」
休憩室を出て行く澤口の後に私も続いた。
先を歩いていく澤口の後ろ姿ばかり見てみても澤口が何を考えているのか、全く分からなかった。
勝手に所有権を主張されて「私はモノじゃない!」って怒りたいくらいなのに。
密かに想い続けていた岡本課長に変な誤解されたかもしれないのに。
何より同僚に『付き合っている以上』だなんて宣言されて面倒なことになりそうで困るはずなのに。
どうしてか心が浮ついて何も考えられなかった。