お見合い相手はエリート同期
どうやってここまで歩いてきたのか。
思い出せないけれど、どうにか澤口に支えられて歩いてきたんだと思う。
部屋に入ってドアが閉められると我慢していた何かが決壊して涙が溢れた。
流れ出した涙は意思とは関係なくとめどなく溢れ出る。
抱き寄せようとする気配を感じて、その腕を振り払った。
「笑ってたんでしょ。どうせ。
馬鹿だなって。
またダメ男を引っ掛けてるって。」
澤口は何も言ってくれない。
私からは悲痛な声が漏れた。
「今回は……知らなかったんだもの。」
もう少しで不倫するところだったかもしれない。
いくらダメ男収集家と揶揄されても人の道を踏み外したことはないのに。
「知らないって……少しは警戒しろよ。」
呆れた声に私の気持ちは溢れ出して止まらない。
「だって指輪も、、職場ではしてないし奥様が心配しますよって言ったら、そんな人いないって。」
2人で何度か食事に行ったことがある。
同じ会社の人だからとブレーキがかかっていただけで、社外の人だったらきっと関係は進んでいた。