お見合い相手はエリート同期
10.染められて
「とにかく。腹に飯を入れろ。
腹が空いてると碌なことない。」
黙って隣にしゃがみ込んでまでいてくれた澤口が「あー。足が痺れてるわ」なんて言いながら立ち上がって、どうやらルームサービスを頼んでくれている。
蔑むことも責めることもせずに、ただ側にいてくれた。
そのことが不思議でしかなくて、けれどとても救われる思いだった。
電話が終わった澤口は近くの椅子へと腰掛けた。
長い脚を軽く組んで「朱音もこっち来れば?」と言った。
隣に座る前に私は聞きたいことがあった。
「明日の、アレ。
行けませんって私が断ったのも知ってたの?」
顔を上げて澤口を見ると目を細めて笑った……ように見えたけど、澤口があんなに優しい顔で微笑むなんて嘘みたいで自分の目を疑ってしまった。