お見合い相手はエリート同期

 いつもと変わらない味気ない毎日は繰り返しやってくる。
 朝起きて顔を洗い、軽く朝食を摂り、メイクに髪のセット、変わり映えしない服を着て。

 昨日、変われると思ったのに。

 いつもより入念にメイクを施し、いつもより華やかな服を選んだ。

 靴もいつもは履かない7センチのヒールのものを選んだ。
 7センチヒールは脚を一番綺麗に見せてエレガントな女性を演出できる、らしい。

 カツカツとヒールの音を響かせて歩くのもなかなか気持ち良かった。

 ただ、これを履くと170センチ近くになってしまうのは致し方ない。
 一切の妥協はしないと心に決めていた。

 それを、澤口は軽々と飛び越えては来た。
 それがまた悔しい。

 同期だから嫌でも知っている。
 同期もたくさんいるからそこまでの関わりはなかったけれど、何より澤口は目立っていた。

 180センチを超える高身長や、整った顔立ちやら何やらもさることながら、嫌味なくらい仕事も出来るらしく。
 同期期待の星とまで言われていた。

 期待の星と言われるだけあって早々に海外赴任をして、日本に居なかったはずだ。
 澤口の帰国は安穏とした生活に影を落とす事態になり兼ねない。

 変わり映えしない毎日に変化を望んではいたけれど、望んでいたのはこんな変化じゃない。

< 5 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop