お見合い相手はエリート同期
「せっかくだから夜景も見ておけよ。」
立ち上がった澤口が閉められていたカーテンを開けてくれた。
「うわぁ。すごい……。」
昨日の夜景もさることながら、ここもさすが。
窓で切り取られた絵画のように揺らめく光が美しい。
感嘆の声を漏らした私に、満足そうな「フッ」と漏れた息が聞こえた。
もしかして、思い込んでいただけで、いつも馬鹿にされていたわけじゃ………。
ううん。そんなわけない。
嫌いって言われたんだから。
つかめない澤口の心は見ないように窓際へ歩み寄った。
置かれた調度品はもちろん夜景も別世界のようだ。
「澤口ってもしかして、お坊ちゃん?」
「……フッ。いや。一般的だと思うけど?
ま、俺自身はお前より稼いでるよな。
俺、仕事できるし。」
いつもの「フッ」っていう笑いも前ほど嫌じゃないし、あからさまな自慢もその通りだろうなぁって納得できてしまった。
「なんだよ。言い返して来いよ。
メンタル弱り過ぎだろ。
このままじゃ俺、スゲー嫌な奴だ。」
苦笑する澤口は人差し指でグッとおでこを押してからかってくる。
「だって嫌味なくらい何でも持ってるんだもの。」
「なんだよ。それ。」
軽い笑いを吐いて髪をかきあげる仕草に目を奪われそうになって慌てて目を逸らした。
本当、メンタル弱り過ぎだよ。
澤口に素でときめくとか、どうかしてる。