お見合い相手はエリート同期
夕食を済ませ、先に入って来いという言葉に甘えてお風呂をいただく。
脱衣所に用意されているホテルのパジャマが上質なシルク製で、なんだか艶めかしく感じてしまった。
逃げ出したい羞恥心を抱えつつ、澤口の「さっきの今で……」という言葉だけを信じて部屋へと戻った。
私に気づいた澤口が私への観察する目つきをはばかることなく向ける。
「お前さぁ。」
ため息混じりに言われ、
「ノーメイクが耐えられるほどの顔だと思ってんの?」とか言いそうだなって心の中で苦笑した。
けれど続けられた言葉は予想していたものとは違うものだった。
「スッピンの方が可愛いって余程の馬鹿だろ。」
相変わらず馬鹿とは言われちゃうんだけどね。
「何それ。けなしてんの?褒めてんの?」
冷たい視線を向けられて、けなしてるのよね。と、1人納得する。
「今からはそのままの顔で。
もちろん会社もな。」
「無理に決まってるでしょ?」
いい大人がスッピンなんて痛い。
イタ過ぎる。
「じゃ眉とリップくらいにして。
ゴテゴテしてるの嫌い。」
それだけ告げて、お風呂に向かおうとする澤口を引き留める。
「ちょっと!無理だったら!
あからさまに化粧なんて変えたら、男に変えさせられたのかって………。」
「フッ。思われた方がいいだろ。
新しい男に染められたってな。
指輪よりよっぽど効果がありそうだ。」
意地悪な笑みを残して澤口はバスルームのドアを閉めてしまった。