お見合い相手はエリート同期
近づいた澤口に手を取られ、その手はあらぬところへいざなわれた。
「…………ッ!」
とっさに手を引っ込めても感触がまだあるような気がして、顔が熱くなるのを感じた。
なんというか……。
反応してて嬉しいって思っちゃう自分はうら若き乙女としてどうなの?
だって澤口が私のこと女として見てるってことで……。
再び離れた場所に体を転がした澤口が呆れたよな声を出す。
「念の為、言っておくけど。
ただの生理現象だからな。」
ちゃんとクギを刺すのを忘れないところが律儀というかなんというか。
お前のこと好きなわけじゃない。
嫌いなんだからなって言われてる気がした。
肌触りのいいシーツに程よく沈むスプリングの効いたベッド。
夢見の良さそうな寝具に包まれているのに、頭の中を不毛な疑問がいくつも巡る。
澤口はどうして見合いなんかしたの?
私のこと嫌いだって言うくせに、どうして断らないの?
どうして岡本課長とのことを知っていたの?
どうして私にここまでしてくれるの?
どうして、どうして……。
たくさんの疑問が浮かんでは消えるけれど、今日はハッキリさせたくなかった。
私達の関係に甘い要素は皆無だってことくらい分かってる。
ただ、それでも……。
今は、今だけは、ハッキリしない色んなことを敢えて有耶無耶にさせて、思っていたよりも優しい澤口の隣で眠っていたかった。