お見合い相手はエリート同期

 目が覚めると夢みたいな昨晩が夢ではなかったことが、見慣れないシーツや天井が証明していた。
 隣に視線を移して、澤口がいないことに気付く。

 もしかして、起きたらいないっていう嫌がらせをしたいが為の大掛かりなドッキリだったってオチ?

 体を起こして辺りを見回すとソファからはみ出ている長い脚を見つけた。

 隣では、寝なかったんだ。

 それがどうしてか。
 分かるような……でも突っ込んで聞いてはいけない気がした。

 起こさないように気をつけて、身支度をする為にもそもそと行動する。

 気は進まないけれど昨日と同じ服を着るしかなくて、それを身につけた。
 それからパウダールームで鏡とにらめっこして悩んでいた。

 このままで、せめて眉とリップのみって……。
 言われた通りにするべきか、でもただからかわれただけかもしれないし……。

 開けっ放しだったドアを形ばかりのノックがされた。
 閉めておくと着替え中って思われるかなという一応は配慮のつもり。

「何、唸ってるの?便秘?」

「違っ。化粧……を、どうしようかと。」

 澤口に配慮ってものはないわけ?配慮!

「そのままでって言ったろ?」

「でも………。」

「いいから。隣、空けて?」

 鏡の前から横に少しズレると顔を洗い始めた。

 なんていうか。
 何もなかったのに、その方がなんだか気恥ずかしい気がするのは気のせい?
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