お見合い相手はエリート同期

 澤口は顔が洗い終わると置かれていた洗面道具を物色して使い捨てカミソリを手にした。

「髭……剃ったりするんだ。」

「そりゃ、まぁ。
 伸ばしてる方が好みなら伸ばしたっていいけど、日本じゃ仕事的にも好まれないよな。」

 顎をさすりながら「何?剃ってるところも見てくわけ?」と意地悪な視線を向けられて、早々に退散する。

 退散してから気付いた。
 後から来たのは澤口なのに!

 まぁ、でも。
 無精髭だろうと寝起きだろうと。
 朝からの至近距離での無駄に整った顔立ちは心臓に悪いから、早々に退散して正解だ。うん。

 それに……何よ。アレ。
「好みなら伸ばしたっていい」って。
 モテる男のリップサービスよね?

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