お見合い相手はエリート同期
一度、家に帰って着替えをしてから出社するつもりだったのは同じみたいで、着々とチェックアウトする準備を進めていく。
そんな慌ただしい中で澤口が戯言を言う。
「朝だけど今日は送ってく。」
「いやいやいや。やめて。お願い。
朝に送ってもらって会社の人に見られでもしたら、それこそどうするのよ。
この部屋を一歩でも出たら私達は見ず知らずの人よ?」
もちろん大前提はそういう理由だけど。
朝、送ってもらうことはもちろん、ホテルをチェックアウトするところから。
すれ違う人、全てに「あぁ。この人達は……」って思われないかって想像するだけで我慢ならない。
分かってる。
誰も何も思わないってことくらい。
分かってる。
自意識過剰だってことくらい。
でもね。やっぱり何もないからこそ逆に気恥ずかしいというか。
だったら何かあった方が良かったのかといえば、そういうわけでもなくて………。
長いため息を吐いた澤口が妥協案を出した。
「分かった。
部屋を出る時に後から出る方がドアで見送るってことなら朱音の要望をのもう。」
それくらいなら。
もし私が後に出るのなら見送るくらいするつもりだったし。
私は二つ返事でOKを出した。