お見合い相手はエリート同期
俺から出ようと言う澤口を見送る為に私もドアの方までついていく。
「あ、そういえば。
昨日は迷惑をかけたんだし、ここは私が払うよ。」
「そ?ありがとな。給料3ヶ月分。」
胡散臭い笑顔で片手を出された。
「嘘……。」
「うん。嘘。」
出された手をパチンッとたたくと笑われた。
それは悪戯が成功したみたいな初めて見た顔。
「うっわ………。」
その笑顔、かなりずるい。
「何?」
「ううん。こっちの話。」
「お前さぁ。」
聞き飽きた呆れたような声を出す澤口が「そんな風だから変な男に捕まるんじゃね?」と減らず口をたたく。
「そんな風って、どうな風よ。」
悪戯した顔が可愛いって思っちゃうこと?
「黙ってれば払ってやるって言ってるのに、よ。」
あぁ。そういうことか。
私もため息を漏らして抗議する。
「気前よく払ってくれてた人にある日連れて行かれたのは風俗店だったわ。
今までの分、働いて返せよって。」
「…………は?
朝からショッキングな人生語ってくれるんだな。」
髪に手を入れて表情が見えなくなった澤口は最大級に呆れて、馬鹿にされるのか、蔑むのか……。
そうはならないって思って話しちゃった私は澤口に甘えてるのかな。