お見合い相手はエリート同期
2.澤口恭一
私も澤口も大企業であるアバンスジャパンに勤めている。
アバンスはフランスの高級車で唯一日本での開発拠点がここアバンスジャパン生産開発事業部。
日本向けのアバンスの車種の開発設計から生産までを行なっていた。
大企業だから同期の数もそれなりにいて、私にとって澤口はその中の1人でしかなかった。
何度か話したことはあったかどうか……程度の人で、何より澤口は女の子にモテたからいざこざに巻き込まれたくなくて近づくのを避けていたのもある。
その関係が変わったのは、定期的に開かれているある同期会でのこと。
お手洗いから戻ろうとするところへ仲がいい同期の杉原知世に腕を引かれた。
「澤口くんが高橋さんのこと話してるよ。」
「はい?」
あの、澤口くんが?
狐につままれたような気分になりながら、杉原さんに手を引かれて居酒屋の通路で立ち止まった。
「シーッ」と口に指を当てた杉原さんからして、盗み聞きするつもりらしかった。
個室には男性しかいないようで、あけすけな会話がなされているみたいだ。
それをキャッチしてくるなんて杉原さん、すごいな……。
そんなことに感心していると本当に話題は私のことだったらしく、自分の名前が出て変な緊張感が高まる。
「高橋さん、美人でさ。
同期の中で一番の狙い目じゃない?」