お見合い相手はエリート同期

 マンションへ帰り、化粧をどうしようかと鏡の前のにらめっこを再びしていると、嫌でも目に入る自分の唇。

 指で触れて、そして赤面する。
 キスだけで中学生でもあるまいし。

 でも、、あんなキス………。

 アレは相当遊んでたね。
 澤口のスペックなら納得なのに、胸の奥の解せない痛み。

 盛大なため息をついて目を閉じる。

 目を閉じたからって澤口は消えてくれない。

 今朝は突然で気付いた時にはキスをされていて、キス前の近づいてきた顔なんて見る暇なかったのに。

 初日の、からかう為に至近距離になった顔が今さら思い出される。

 あんな、顔とキス………。

「もぉー!」

 どこから出たか分からないような叫び声をあげて顔を突っ伏した。

「本当。どうして私と見合いしたのよ。」

 私には解けない謎は、心へわだかまりとしてしこりを残した。

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