お見合い相手はエリート同期

 化粧はベース下地だけでいけるやつにした。
 コンビニくらいならこれで行ったこともある。

 あとは眉とリップ。
 濃くすると浮いちゃうから、ごくごく薄めで。

 あぁ。でもコンビニに行く時は大きめの眼鏡で隠してたから……。
 マンションを出る直前で怖気付いて眼鏡をかけて出勤した。

「はよ。
 ……芸能人にでもなったつもり?」

 珍しく朝、一緒になった澤口の安定した呆れ声に何故だか安堵する。

 そういう澤口は黙っていれば爽やかなイケメン俳優ですけどね。
 黙ってれば!!

 私は睨むのを忘れずに、眼鏡を外して渋々鞄の中にしまった。

「おっはよー!」

 後ろ姿で私だと気付いた知世が前側を見て絶句した。

 ほら。やっぱり変なんだよ。

 フル装備の化粧ポーチ、念の為に持ってきて良かった。

「誰かと思った〜。毒素が抜けた感じね。」

「毒………。」

 それじゃ何?
 今日の私は解毒されたとでも?

「フッ」と隣斜め上からの含み笑いが聞こえて見上げて確認するのでさえ馬鹿馬鹿しい。

 それなのに。
 澤口の隣が心地いいなんて思ってる今の私の方がよっぽど毒されてると思う。

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