お見合い相手はエリート同期

 気付けば9時近く。

 担当している『IDEAL 』のプロジェクト以外にもやらなければならない仕事は山のようにあって、終電間際になることもザラだった。

 やればやるだけ仕事が減るどころか増えている気がして、ここはキリをつけて帰ろうとパソコンを落とした。

「お先に失礼します。」

「お疲れ様〜。」

 設計の部署は遅くまで残る人が多く、絶対に過重労働だよなぁと思いつつ、みんなどうにかやりくりしている。

 ロッカーに荷物を取りに行って、ふと『終業間際に私用メールにて要連絡』を思い出して携帯を確認した。

 澤口だって遅くまで残業していそうなイメージだ。
 メールした方がいいのか……。

 無視して帰ったりしたら、今度の社内メールにまた開封通知が付きそうだなとげんなりしてメールを送った。

『お疲れ様です。終わったから帰るね。』

 うわぁ。なんだか恋人みたい。
 澤口相手に何してるんだろ。ヤダヤダ。

 すぐに手の中の携帯が騒ぎ始めて、電話が鳴った。
 とっさに通話ボタンを押した。

「澤口です。お疲れ様です。」

 会社モードなのか、キリリとした低音の声に若干のときめきを覚えて辟易する。

 外側に騙され過ぎ。
 中身はあの、澤口だよ?

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