お見合い相手はエリート同期
顔はさすがに見えないけど、声の感じからして調子のいい小倉くんかな。
お調子者の言葉でも褒められれば嬉しいことは嬉しい。
杉原さんと目があって頷かれた。
次はきっと澤口くんが発言するわよと言われた気がした。
気にしていたわけじゃないけど、あれだけモテる澤口くんに何か言われたら悪い気はしない。
ドキドキ高鳴る鼓動を感じながら続きを待った。
すると低音のうっとりと聞き惚れそうな声がとてもじゃないけどうっとりできない言葉を発した。
「俺、高橋のこと嫌い。」
………はい?
今にも乗り込んで行きそうな私の腕を杉原さんがつかんで、首を左右に振っている。
黙ってろってこと?
続けて聞こえてきたのは、ものすごく呆れた声と痛烈な批判。
「だってあいつ。馬鹿でしょ。」
それ以上は聞いていられなくて制止する杉原さんを振り切って私はその場を離れた。
乗り込んで行かなかっただけ褒めて欲しい。
どうしてよく知りもしない澤口くんに『嫌い』だの『馬鹿』だの言われなきゃいけないわけ?
沸々と湧き上がる怒りは何も最初の期待値が大きかったからだけじゃない。
あわよくば「俺も高橋さん綺麗だなって思ってた」って聞こうだなんて邪心が無かったわけでもないけど。
それにしたってあまりにもひどい。