お見合い相手はエリート同期
13.会いたくない人
「会わせたい奴」だなんて、もしかして……この時間からご両親ってことないわよね?
見合いだし、澤口ならあり得そうで怖いわ。
不意に人の気配を感じて視線を移すと、見なきゃ良かったと後悔する人が立っていた。
その人は平然とにこやかな挨拶を口にした。
「お疲れ様。」
「……お疲れ様です。」
つい指に視線が行って、やっぱり指輪は付けていないことを確認した。
私の視線に気付いた岡本課長は柔らかく微笑んだ。
今まではその笑顔に癒されたはずなのに、今は反吐が出そうだ。
「あぁ。気になる?
金属アレルギーなんだ。」
嘘ばっかり。
それならそうと、奥様の前でも同じように言えばいいのに。
何より私が「奥様が心配しますよ」と言った時に「そんな人いない」って言っていた。
それとも、そう言った時はいなくて、最近になって結婚したとでも言うわけ?
「お時間、大丈夫なんですか?」
昨日誘われたホテルの時間は10時だったのを思い出して、わざと聞いてやった。
「あぁ。行くよ。
最愛の人が待っているからね。」
嘘っぽい言い方。
本当に私って見る目がない。