お見合い相手はエリート同期
「結構です。
俺から話しますから。」
淀みのない真っ直ぐな声を聞いて安心する自分がいた。
澤口にときめくのは、いつもピンチに助けられているせいだ。
吊り橋効果ってやつ……。
そんなどうでもいい発見をしている私の肩を抱き寄せて、澤口はあろうことかこめかみ辺りにキスを落とした。
「邪魔しないでもらえます?
それとも今日の場所、俺らに譲ってもらえますか?
昨日のところよりは劣るでしょうけど、まぁ無いよりはマシかな。」
鼻をへし折られた岡本課長は顔を引きつらせて「お先に失礼するよ」と去っていく。
その背中を見送ることなく澤口に腕をつかまれて岡本課長が歩いていった出口の方とは逆側へ連れていかれた。
澤口の部署の方まで歩いていくとある会議室の前で振り返った澤口が私へ優しく微笑みかけた。
促されるまま中へと入る。
私へ優しい顔をする時もそういえばあったんだった。
ただ、それは岡本課長と何かあった後、私へ向ける同情を含んだもので……。
狭い会議室は4畳くらいしかない閉塞感を感じるくらいの狭さ。
手前にテーブルと椅子が一脚。
そのすぐ奥に簡易ベッド……。
後から入った澤口がドアの鍵を閉めた音を聞いて胸騒ぎがした。