お見合い相手はエリート同期

「さすがに今日はそのままにしてたら腫れる。」

 それだけ言うと簡易ベッドの端に澤口も腰を下ろした。
 ギイッと鈍い音をさせて、端に座った澤口とはもう1人座れるくらいの距離があった。

「前と立場が逆ね。」

 渡されたのは目に付ける温熱シート。
 どうしてか、いつの間にか涙が流れていて、その為にここに連れてきたみたいだ。

 悔し涙なのか、ホッとした涙なのか。
 理由は分からないけど、人前で、よりによって澤口の前で2度も泣くはめになってしまった。

 岡本課長の前では気丈に振る舞っていたつもりだったから、澤口に抱き寄せられた不意打ちの温もりのせいかもしれない。

「先に渡したアレ。
 取り上げるのなら渡す必要あった?」

 変なモノを渡されてお陰で涙は引っ込んでくれたけど。

「取り上げられたくなかった?」

「冗談は大概にして。」

 悪戯をする澤口は小学生並みなんだから。
 呆れた視線を向けると澤口は「フッ」と息を吐いて壁にもたれ目を閉じた。

 澤口に何かを訴えても無駄なんだったと思い直して私も温熱シートを目に当てると壁にもたれて目を閉じた。

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