お見合い相手はエリート同期
「なんなら膝枕、お貸ししますよ?」
「いいえ。結構です。」
「化粧、似合ってるよ。」
「それはどうも。」
「今日はキスしないよ。」
「……は?」
なんの宣言?
「ガッカリした?」
「バッカじゃないの?」
「フッ。」
本当に馬鹿みたい。
こんなのが居心地がいいなんて。
「岡本課長とは海外赴任先で一緒に仕事をしたことがある。」
「……そう。」
突然話し出されて戸惑いつつも、納得した。
他部署の人でお互いに知っている風だった2人の間柄はそういう知り合いだったのだ。
「岡本課長はその頃も今と変わらず。」
今と変わらず、女を漁ってたとでも続きそうな雰囲気だ。
そうは見せないのだから、相当なツワモノなのか、単に私が本当に馬鹿なだけか。
「現地で知り合った日本人の女の子を妊娠させて責任を取る形で。
海外赴任中だったし、彼女は妊娠してたからごくごく身内だけで済ませて周りで知ってる奴は少ないだろうね。」
彼の裏の顔を知っていたのなら、岡本課長を警戒する理由は理解できる。
そうだとしても……。
どうして私が誘われたことや、ホテルの名称に部屋番号や時間まで知っていたんだろう。
「少し寝れば?
仮眠室として使ってる部屋だから問題ない。
使用中にしたし、鍵もかけた。」
「だからやましいことに使う奴もいるがな」と付け加えて、それから黙ってしまった。