お見合い相手はエリート同期
「……家に帰ると妻子が待ってますってことはないわよね?」
「ハハッ。さすがダメ男収集家。
お目が高い。」
「え?本当に?」
目を丸くさせると吹き出された。
「まさか。
そんな面倒臭いこと俺はしない。」
そう、思いたいけど……。
信じていないのが顔に出ていたのか、澤口は重ねて言った。
「もしそうなら部長もビックリだな。」
「そう…だよね。」
見合いの話を持ってきてくれた部長にも申し訳ないことになってしまう。
澤口はどこかつかめない人ではあるけど、いくらなんでもそんなことする人だなんて思いたくない。
外を眺めている澤口の横顔を見つめて言葉をこぼした。
「あの、ありがとね。」
「何が。」
「うーん。うん。なんでもない。」
「なんだよ。それ。」
呆れた声を聞いて私も反対側の窓から外を眺めた。
流れていく景色を見ながら怒涛の数日間を思い出す。
澤口のお陰で岡本課長との色々を岡本課長の姿を見るまで忘れられていたことは確かだ。
正確には澤口の読めない行動に振り回されたせいといえば、せいなんだけど。
急に高級ホテルに泊まらされたり、化粧するなって言われたり、キスまでされて……。