お見合い相手はエリート同期
3.見合い続行?
「あはは。それは傑作だったね。
見たかったなぁ。朱音の動揺してる顔。」
知世は他人事だと思って楽しそうに笑う。
あの同期会から3年近くの月日が流れて、私は杉原さんのことを知世と呼ぶようになったし、知世は知世で、私のことを高橋さんではなく朱音と呼ぶようになった。
そして私は澤口くんとも呼ばなくなって、いつの間にか呼び捨てで澤口と呼んでいた。
まぁ、奴の名前を呼ぶのは知世と噂話をする時くらいで、全くの接点がない私達には海外へ行った澤口の情報は皆無に等しかった。
「動揺?見せるわけないでしょ?
あいつが目の前にいる時に。」
笑っていた知世が食堂の狭いテーブルから身を乗り出すと口元に手を添えて声を落とした。
「部長、あっちにいるよ?」
視線を後方へ移してそれらしき人を確認する。
「ありがとう!行ってくる!」
「食器、片付けておいてあげる。」
「うん。ありがとう!」
知世に軽く手をあげて、私は足早に部長の元へと急いだ。