お見合い相手はエリート同期

 澤口は澤口でカウンターに座る姿はさまになっていてムカつくのはブレない。

 黙っていればカッコイイのに。

 なんて悔し紛れの憎まれ口を心の中で浮かべてみても脆くも崩れてしまうくらいに見惚れそうになって、視線を彷徨わせた。

 2人が話していると、隣にいることが申し訳ないくらい素敵で絵になっている。

 それなのに、澤口の方はそんなの気にしていない。

「どうした?朱音。バーは苦手?」

 透さんとは久しぶりに会ったみたいだし積もる話もあると思うのに、私への気遣いを忘れない。
 そんな澤口を見て透さんは微笑んでいる。

「恭一のこういう姿を見られるのは貴重だな。」

「透は余計なこと言わなくていいからな。」

 澤口の言葉に透さんは肩を竦めて私へウィンクをした。
 どう返していいのか分からなくて曖昧に微笑むことしか出来ない。

「朱音には弱めのを頼むよ。」

「え?」

 当たり前のように言われて顔を上げる。

「酒、弱いんだろ?」

「そう、だけど……。」

 どうして知っているの?と、顔に書いてあったみたいで笑われた。

「朱音のことはなんでも知ってるって言ったろ?
 弱いんだからあんまり飲むなよ?」

「………うん。」

「バーの割に飯も美味いんだ。
 何か食べよう。」

 彼氏面みたいなのしないで欲しい。

 コロッと落ちてしまいそうな自分の心を戒めるようにカウンターの下でギュッと手を握り締めた。

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