お見合い相手はエリート同期

「だから、しないって。」

 グイッと離されて手を引かれて歩き出す。

「俺とのキスが酒の味とか嫌だし。」

 そんな理由……。

「俺とのキスが毎回、岡本課長がらみとか勘弁だし。」

 それ、前回のしない宣言の時の理由?

 やっぱり澤口酔ってる。

 熱くなる顔を押さえて、澤口の腕にギュッとしがみついた。

「何?転びそうだった?」

 上擦った澤口の声に私も慌てて返す。

「ん?うん。そう。
 澤口、歩くの早いんだもん。」

 本当は違うけど。

 勘違いでもいいや。
 大切にしてくれてるって思っておこう。

 速度を緩めてくれた澤口が私の頭をわしゃわしゃとかき回した。

「何?もう。グチャグチャになっちゃう。」

「……かわいい。」

 ボソッと聞こえた小さな声にもう何も言えなくなってしまって黙って駅までの道を歩いた。

 熱くて本当に酔いが回ってしまったのかもしれない。
 飲んだのはほとんどがノンアルコールだったけれど。

 ふわふわと宙に浮いているような気分だった。

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