パクチーの王様
「圭太はお前と結婚できないのを知っていたから、お前に触れなかったんだろうな。

 よくそんな状態で我慢したな」

 偉かったな、と言われてしまったのだが、
「いや、だから、そもそも圭太と付き合ってるつもりもなかったんですけどね」
と芽以は答える。

 人から見たら、付き合ってるんだか、付き合ってないんだかわからない宙ぶらりんの状態で、何年も待たされた女、になってしまうのかもしれないが。

 正直言って、圭太のことをどう思っていたのか、今でもよくわからない。

 ただ、なんとなく、今までも側に居たから、これからもずっと側に居るんだろう、くらいに思っていただけだ。

「……じゃあ、お前は誰と付き合ってるつもりだったんだ」
と訊かれ、

「いえ、誰とも、

 ……ぼーっと」
と言って、

「ぼーっとしてそうだな」
と言われてしまった。

 相変わらず、失礼ナリ……。




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